1 教員の長時間勤務の見直し
教員の長時間勤務を見直すには,学校や教員が担うべき業務を見直し,また学校や教員が担うべき業務の中でも効率化や負担軽減が図れる業務があるか否かを検討しなければなりません。まずは管理職を含めた全教職員の勤務時間を把握することが必要です。
2 学校における働き方改革
平成29年12月22日,「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」がまとめられました。
学校における働き方改革は,限られた時間の中で学生・生徒に接する時間を十分に確保し,教員の日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで,教員の人間性を高め,学生・生徒に真に必要な総合的な指導を持続的に行うことができる状況を作ろうとするものです。
この中間まとめでは,①業務の役割分担・適正化を着実に実行するための方策,②学校が作成する計画等・組織運営に関する見直し,③勤務時間に関する意識改革と時間外勤務の抑制のために必要な措置,④学校における働き方改革の実現に向けた環境整備,⑤進捗状況の把握等といった点についての提言がなされました。
働き方改革の中で,まず重要なのは,業務の役割分担・適正化です。学校で行っている業務の内,その業務は本当に学校が行う必要がある業務なのか,学校が行うべき業務としても,本当に教員が担う必要のある業務なのか,教員が担う業務としても,効率化や負担の軽減はできないのか,という視点です。
3 学校が担うべき業務
学校が担うべき業務は,①学習指導要領等を基準として編成された教育課程に基づく学習指導,②児童生徒の人格の形成を助けるために必要不可欠な生徒指導・進路指導,③保護者・地域等と連携を進めながら,これら教育課程の実施や生徒指導の実施に必要な学校経営や学校運営業務と考えられています。
しかしながら,教員は,こうした業務に加え,その関連業務についても,範囲が曖昧なまま行っている実態があります。
具体的には,児童生徒の登下校に対する対応,放課後から夜間等における見回り,児童生徒が補導されたときの対応について,保護者・PTAや地域ボランティアとの連絡調整を図り,業務の見直しが可能か否かを検討する必要があります。
4 教員の担うべき業務
上記の学校の担うべき業務の主たる担い手は教員です。しかしながら,教員が行っている業務のうち,教員以外が担った方が児童生徒に対してより効果的な教育活動を展開でき
る業務や教員が業務の主たる担い手であるとしても,その一部が,スクールカンセラー,スクールソーシャルワーカー,部活動指導員等の専門スタッフとの役割分担や地域との連携・協働により,教員以外が担うことが可能な業務も少なくありません。
具体的には,部活動等の課外活動,進路指導,支援が必要な児童生徒・家庭への対応等の業務について教員以外の専門スタッフに委ねることが可能か否かを検討する必要があります。
5 教員の業務の負担軽減
授業や学校行事の運営等教員の本来的な業務においても,業務の本質的な部分に教員が集中できるよう,業務の効率化や教員の負担軽減を検討する必要があります。
具体的には,授業の準備のうち,授業で使用する教材等の印刷や物品等の準備といった補助的業務,教材開発の支援,理科の授業における実験や観察の準備等について教員と連携するサポートスタッフを雇用することや,ICT設備・OA機器の導入・更新を進めること,学校行事の準備・運営のうち,児童生徒の指導に直接的に関わらない業務について,事務職員や民間委託等の外部人材の活用,学習評価や成績処理に関する業務のうち,宿題等の提出状況の確認,簡単な漢字・計算ドリルの丸付け等の補助的業務について教員と連携するサポートスタッフの雇用等が考えられます。
6 勤務時間の管理
教員の業務の削減や業務負担軽減を図る前提として,まずは現在の業務の状況を把握し,適正な勤務時間を検討しなければなりません。
教員の勤務時間を管理する方法としては,自己申告方式,タイムカード,ICTの活用等の方法があります。
勤務時間を正確に把握することにより,特にどの分野の業務の削減,業務負担の軽減が必要なのか,を把握することが可能となります。
以上
(文責 弁護士 丸山恵一郎)