【ざっくりわかる犯罪収益移転防止法における取引時確認】
1 はじめに
犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」)は,マネー・ローンダリングやテロ資金供与防止の目的で,特定の事業者に対して,特定の取引を行う際に,取引時確認を義務付けています。
この点,私たち弁護士もこの特定の事業者に該当します。私たちも東京弁護士会に対し,取引時確認の履行状況について,年に1回報告をすることになっています。なお,弁護士には守秘義務がありますので,ご相談内容等,依頼者の秘密は厳守しますので,ご安心ください。
2 特定の事業者
銀行等の金融機関等や,宅地建物取引業者,宝石・貴金属取扱事業者といった高額な物の売買を行う業者,郵便物受取サービス業者,電話受付代行業者等の犯罪に使用されることの多い業者,司法書士,行政書士,公認会計士,税理士,弁護士などの専門家等が対象となっています。
3 取引時確認の必要な取引
取引時確認は,特定の事業者が特定取引等に際して行わなければならない確認のことをさします。
特定取引等というのは,犯収法施行令7条に列挙されている取引と特別に注意を要する取引及びハイリスク取引のことを指します。
特別に注意を要する取引とは,犯収法施行令7条に列挙されている取引以外の取引で,マネー・ローンダリングの疑いがあると認められた取引や同種の取引の態様と著しく異なる態様で行われる取引のことです。
ハイリスク取引とは,なりすましの疑いがある取引10又は本人特定事項を偽っていた疑いがある顧客との取引,イランや北朝鮮に居住・所在している顧客との取引,外国の重要な公的地位にある者との取引です。
4 取引時確認の内容
取引時確認において,確認すべき事項は,本人特定事項,取引を行う目的,職業(顧客が自然人の場合)又は事業の内容(顧客が法人の場合),に加え,顧客が法人の場合には,実質的支配者です。
本人特定事項とは,個人については,氏名・住所・生年月日,法人については,名称・本店又は主たる事業所の所在地です。本人確認書類で確認をします。
取引を行う目的,職業,実質的支配者が誰であるかについては,顧客からの申告を受ける方法で確認をします。なお,実質的支配者とは,法人の事業経営
を実質的に支配することが可能となる関係にある者をいいます。
事業の内容については,登記事項証明書や定款で確認をします。
本人確認書類は,自然人の場合には,免許証等の顔写真付きの身分証明書,保険証等の顔写真の付いていない身分証明書,住民票や戸籍などとされています。免許証等の顔写真付きの身分証明書のみ(対面の場合)又はこれらの組み合わせで確認をすることになっています。法人の場合には,登記事項証明書や印鑑登録証明書です。
犯収法の詳しい解説は,警視庁のHPで見ることができますので,興味があれば是非検索してみて下さい。
以上
(文責 弁護士 中島友紀)