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弁護士沖山延史が「私立学校法令和5年改正についてのポイント」のコラムを投稿しました

2023年5月11日

※2023年11月に、<令和5年私学法改正オンラインセミナー ~新たな機関設計によるガバナンス改革の推進~>を行います。
私学法改正について、わかりやすく解説するセミナーとなっております。
こちらをご参照ください。
 
 

令和5年4月26日、私立学校法改正法案が参議院本会議にて可決され、成立しました。施行日は令和7年4月1日となっておりますが、今のうちに改正内容を理解してどのような形で改正法に対応し、寄付行為変更等を行うかを検討する必要があります。

今回の制度改正の趣旨は、「社会の要請に応え得る実効性のあるガバナンス改革を推進するための制度改正」とされています。

具体的には、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方から、各機関(理事・監事・評議員会)の権限分配を整理することを目的としています。

改正点は多岐にわたりますが、機関の権限分配という観点から、主に機関の構成員に関する改正点を整理し、ポイントをまとめて参ります。
 

1 役員の選解任手続について

① 理事・理事長

改正前は、理事の選解任方法は、1号理事(学校長)以外は、「寄附行為に定めるところにより」選任することになっており(旧38条1項)、寄附行為では、2号理事(評議員理事)は評議員会で、3号理事(学識経験理事)は理事会でそれぞれ選任するのが一般的な形になっていました。

改正後は、寄付行為で定めるところにより、「理事選任機関」が選任することになります(新30条1項)。校長理事を必ず含まなければならない点は現行法と変わりませんが(新31条4項1号)、校長というだけで当然に理事になるものではなく、必ず選任機関での選任が必要となります。

いずれも、学校経営の透明化、監視監督機能の強化という趣旨から加えられたものと理解できます。

② 監事

改正前は、監事の選任は評議員会の同意を得て理事長が選任することになっていました(旧38条4項)。

改正後は、監事は評議員会の決議によって選任することとなりました(新45条1項)。

これも、監事による監視監督の対象となる理事長が監事を選任する仕組みを廃止することで、各機関の機能分離を強化しようとするものといえます。
 

2 役員等の兼職禁止について

① 理事と評議員の兼職禁止

改正前は、評議員理事が理事の構成メンバーとして必須とされていましたが(旧38条1項2号)、改正後は兼職禁止となり、評議員は理事の構成メンバーにはなり得ない仕組みとなりました。

評議員会による理事・理事会への監督機能を強化するための措置といえます。

② 監事と子法人役員(監事、監査役等を除く。)、子法人に使用される者との兼職禁止

改正前は規定のなかった、子法人役員・被用者との兼職禁止が明文化されました。

これも、監事による監視監督の対象者が監事と兼職することによる監視監督機能の不全を防止するための措置といえます。
 

3 役員等の構成の要件について

① 理事

改正前は、各役員につき、近親者等(配偶者又は三親等以内の親族)が1人を超えて含まれてはならないという制限のみだったのに対し(旧38条7項)、改正後は、他の2人以上の理事、1人以上の監事、2人以上の評議員との特別利害関係(配偶者又は三親等以内の親族その他文科省令で定める関係)がないことが要件とされ、他の機関との利害関係の断絶がより強固に求められるようになりました。なお、特別利害関係の具体的な内容について、文部科学省作成のQ&Aには、「特別利害関係については省令において具体的に定めることとなりますが、一方の者が他方の者の配偶者又は三親等以内の親族である関係などを定めることを考えています。」とのみ記載があり、詳細が定められていないようですので、今後の法整備を待つことになります。

また、他の理事と特別利害関係を有する理事の数は、理事の総数の1/3を超えないことも求められます。

② 監事
改正前は、監事も理事と同様、近親者等が1人を超えて含まれてはならないという制限のみだったのに対し、改正後は、前述した理事との特別利害関係のほか、他の監事、2名以上の評議員との特別利害関係がないことが要件とされました(新46条3項)。

③ 評議員
改正前は、評議員につき、理事・監事のような利害関係排除の条項はありませんでしたが、前掲した理事・監事との利害関係排除の条項のほか、他の2人以上の評議員と特別利害関係がないこと、という評議員間での利害関係排除条項が新設されました。

さらに、評議員の独立性を強化するため以下の制限が加えられることになりました(新62条)。

・職員である評議員が、評議員の総数の1/3を超えないこと

・理事、理事会が選任する評議員が、評議員の総数の1/2を超えないこと

・役員や他の評議員と特別利害関係を有する者、子法人役員、子法人に使用される者である評議員は、評議員の総数の1/6を超えないこと など

改正ポイントは他にも多々ありますが、各機関の選解任手続、構成等を見るだけでも、監視監督機能の強化を図ろうとする趣旨がよく読み取れます。新法体制に移行するまでの経過措置も定められていますが、詳細については、文部科学省が作成する解説※のほか、年内に当事務所でセミナーも予定しておりますので、詳しい解説はセミナーにご参加いただければと思います。
 

※ 参考 文部科学省「私立学校法の改正について」

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